人は古来から無病息災を望み、祈ってきました。
健康な身体や肌の病気の快復、また色白で美しき肌を願う人々にとって
蛸薬師堂は長く信心の対象とされています。
本尊の薬師如来は「蛸薬師(たこやくし)」 と古来より称され、本尊の台座や建物の蟇股(かえるまた)にも蛸の彫刻が施されたユニークな仏様です。ご利益も大変に特徴的で、美肌や皮膚の病、肌のトラブルの平癒に特にご利益があるといわれ、古くは鯰(なまず)や鯉の絵馬を奉納して願掛けをする風習がありました。
現在の蛸薬師堂は、弁財天の池、不動明王を過ぎ、長い石段を見上げる場所にすえられています。江戸時代の絵図を見ると仁王門から入った場所にあり、明治の初めに本堂の裏に移築され、老朽化とともに、参拝しやすい現在の場所に建築され現在に至ります。古い棟札を見ると「もともとは参道にあり」と書かれており、境内のいろいろな場所にまつられていたことが分かります。
現在の蛸薬師堂は2015年(平成二十七年)に再建されたもので、伝統技法の粋を集め建立され、彫刻や瓦には海洋生物や波濤の意匠が用いられています。
毎月八日の縁日には正面の扉が開扉され、本尊台座や旧堂より移された蟇股に施された蛸の彫刻を拝観することができます。
古くから、人々を病や怪我から救う仏様である薬師如来は、人々の現世での苦しみをすくって下さると信じられています。法多山の蛸薬師は病に苦しむ人々を救い、苦しみを取り除くだけでなく、肌の病や色白美白など現代に生きる人々に優しくご利益を与える優しい仏様として、多くの人々の信仰を集めています。