法多山の本堂へと向かう長い石段で一息つく中段の左に、小さなお堂が建っています。
これは地蔵堂と呼ばれ、小さなお地蔵さまがおまつりされています。
中にはお地蔵さんが二体。前後に並んで地蔵堂の中にいらっしゃいます。
少し変わったことに、前後に一列に並んでまつられており、地蔵堂の後ろにも五体のお地蔵さまが並んでいらっしゃいます。
ここは実は、不思議な地蔵堂。お地蔵さんの年代も不詳、何百年という歴史ある建築物も多い法多山尊永寺の境内にあって、お堂自体は特筆すべき年代も経っていないのですが、旧本堂の絵図によればこの位置には「水屋」があり、明治の銅版画境内図にも「水屋」と書かれています。
この地蔵堂、いつからここにあるのか?なぜここに移築されたのか?中のお地蔵さんの由来、本来、左右に配置する地蔵が、この地蔵堂では縦に配置されている理由など、数多くの謎に包まれています。
1965年の白黒時代のテレビ番組「TBSスパークル 法多山」では、地蔵堂の前の石段を登るお年寄りの姿が今も動画で残されています。1300年の歴史の中で、どれだけの人がこの石段を見上げ、ここで一息ついたのでしょう。
今も法多山の長い石段の途中には、優しげなお地蔵さまが、お参りをする老若男女を慈しむような表情で見守っています。長い石段に息を切らし、空を見上げ、一息つきながら、お地蔵さまに手を合わせ無事な参拝を祈る方の姿が見られます。